掲載日 2026年3月12日
判断能力が十分でなくなり、自分一人で契約や財産の管理を行うことが難しい方を支援する「成年後見人」。今回は、区民成年後見人養成研修を修了し、実際に区民成年後見人として活動している小山由香里さんにお話しいただきました。
区民成年後見人の活動を始めたきっかけを教えてください。
「区民が成年後見人をすることがある」と印象に残っていた
約15年前に世田谷に引っ越してくる前は、日常生活自立支援事業(※)の生活支援員をしていました。
成年後見制度についても知っていたため、テレビで区民成年後見人が取り上げられているのを見て「区民が後見人をすることがあるんだ」と記憶に残っていました。
世田谷でも何か活動したいと思っていたときに、区の広報紙で区民成年後見人の研修があると知り、応募してみようと思ったのがきっかけです。
研修には20人ほど参加していましたが、みなさん本当に前向きで、「やるんだぞ」という意気込みを感じました。毎週集まっているうちに仲間意識もできて、「また来週頑張ろうね」と声を掛け合いながら通っていました。
当時はまだ区民成年後見人がほとんどいない時代でしたが、「私もぜひ活動したい」という思いをより一層強くしました。
- 日常生活自立支援事業
世田谷区でいう「あんしん事業」のこと。判断能力が十分でない方の福祉サービスの利用や金銭管理の支援を行います。
はじめての活動はどのようなものでしたか。
人となりを教えていただくのが楽しかった
最初に担当したのは80過ぎの認知症の男性で、当時は入院していました。
とても温厚な方で、私が病院を訪問するとすごく喜んで、昔のことをいろいろと話してくださいました。
お訪ねするたびに、その方の人となりを教えていただいているようでした。
病院から施設に移られたので、定期的にご本人を訪問しながら、病院や施設の手続き、ご自宅を引き払う手続きなどをお手伝いしました。
手続きを通じてこれまでの暮らしがわかる部分もあり、また違う面から人となりを感じることができました。
その方をだんだん解明できているようで、すごく楽しかったです。
いい最期を迎えることができた
その方は、亡くなるまでの3年弱を担当させていただきました。
私が毎月の訪問に伺ったときはお元気だったのですが、翌日体調を崩して入院し、1週間ほどで亡くなられました。
最期に私のことを呼んでくださったのかなと思ったりもしています。
亡くなられたことを親族の方に連絡したところ、「疎遠になっていたが親族だから」と手続きを引き受けてくださったり、親しかった友人の方が北海道から来て、お葬式で棺に好物を納めていただいたり、本当にいい最期を迎えられてよかったと思っています。

「楽しかった」と笑顔でお話しする小山さん
これまでの活動で印象に残っていることはありますか。
在宅の支援で直面した「成年後見人」が知られていないことの難しさ
その後は知的障害の方、認知症の方、精神障害の方と、4人の方の区民成年後見人を担当しました。
3人目に担当した方は認知症の女性で、在宅で生活していたため、これまでとはまた違った経験になりました。
当時は今よりも成年後見人というものが知られておらず、ケアマネさんなど周囲の支援者は、「成年後見人が決まれば何でもしてもらえる」と考えているようでした。
本来成年後見人は、介護保険などの契約行為を代わりに行うのですが(※)、日々のちょっとしたこともやってくれると思われがちです。
たとえば「電球が切れたから替えてほしい」「病院に連れて行ってほしい」など、応急的な対応はすべて成年後見人の仕事と捉えられてしまうことが多くありました。
在宅の場合は関わる方が多く、それぞれのできる範囲が決まっているからこそ、空いた隙間をどう埋めるのかが問題になります。
成年後見人としてどこまでやっていいのかと思いつつも、在宅の場合は命に関わるので誰も対応しないわけにはいかず、隙間を埋める役割を担わざるを得ないときもありました。
- 成年後見人の仕事について、以下のページで紹介しています。
- 成年後見制度とは
次第に支援者としてのチームができていった
当初は支援者との関係づくりに苦労しましたが、定期的に集まってお話をしていくうちに、次第に成年後見人の役割を理解していただけるようになりました。
徐々にご本人の具合が悪くなってきたときには、ケアマネさんと協力して介護サービスを調整し、毎日誰かが様子を見に行く体制をつくっていきました。
介護サービスが入れない日は私が訪問するようにして、後半は頻繁に伺うこともありました。
結果的にご本人が自宅で倒れた際も早期に発見することができ、様々な関係者とチームで支援することができました。

悩んだときや困ったときは、成年後見センターの職員に相談します
活動のやりがいを教えてください。
その方の残りの生涯を一緒に生きさせていただける
ご本人とお会いすると、不思議と明るい気持ちになって力をもらえます。
お話して帰ってくると、なんとなく嬉しい気持ちになるんですよね。
具合が悪かったり、亡くなるような状態のときはとてもつらいですが、後から思い返すと、最期の何年間かを一緒に楽しく過ごせたこと、深く関わりを持たせていただけたことは、本当にありがたいと思っています。
成年後見人として関わっていると、友人のような、母のような、家族的なものを感じるようになります。
もちろん職域を脱しないように距離感は保たなければならないですが、その方の残りの生涯を一緒に生きさせていただけることにやりがいを感じています。
これから活動を始めたいという方へメッセージをお願いします。
区民成年後見人だからこそ、地域に根差して寄り添っていける
地域に根差して、近くにいるからこそ寄り添えるのは、区民成年後見人ならではだと思います。
親族の方に見ていただけるのであれば本当はよいと思いますが、それが叶わないのであれば、近くでご本人の気持ちを思いやっていけるのが区民成年後見人だと思っています。
区民だからこそ、地域にいるからこそ、ご本人にとって身近な存在でいられるのは、区民成年後見人の魅力だと思います。