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ちょうどいい第三者だからこそ話せることがある
教えて!地域を選んだ理由

ちょうどいい第三者だからこそ話せることがある

子どもたちの学びの場「せたがやゼミナール」(せたゼミ)で活動する天野伊織さんにお話をお聞きしました。

掲載日 2026年7月8日

日大文理サークル「せたがやゼミナール」
天野伊織さん
天野伊織さん

経済的な理由や家庭の環境など、様々な背景を持つ家庭の子どもたちの学びの場「せたがやゼミナール」。日本大学文理学部のサークル「せたがやゼミナール」(せたゼミサークル)の学生たちが、地域のボランティアと一緒に活動を支えています。今回はせたゼミサークルの代表を務める天野伊織さんにお話をお聞きしました。

活動を始めたきっかけを教えてください。

教科書だけではわからない、福祉の現場へ

現在は日本大学文理学部社会福祉学科に通っています。
大学に入学した頃にこの活動を知り、今後社会福祉の道に進んでいくうえで「早いうちから実際の現場を経験しておきたい」という気持ちでサークルへの加入を決めました。

当時は公的扶助(※)に関心があったのですが、大学の講義を受けるなかで児童福祉に興味を持ち、より一層せたゼミの活動に力を入れるようになりました。
大学1年生の夏前、それまで非公認だったせたゼミサークルが公認サークルになるタイミングで、広報活動などの運営に関わり始めました。

最初は子どもたちとの関わり方がまったくわからず、どんな話をすればいいのか、不安でいっぱいでした。
それでも活動を続けていくうちに、それぞれの子どもが求める距離感や好きなこともわかってきて、子どもたち同士の関わりも見られるようになり、いまでは「現場に行くのがすごく楽しい」と思っています。

  • 公的扶助:生活に困窮する方の最低限度の生活を保障し、自立を助ける制度のこと。

「現場に行くのがすごく楽しい」と笑顔で語る天野さん

現在の活動内容を教えてください。

学校のできごとから受験の悩みまで、なんでも話せる距離感

せたゼミは5拠点で開催していますが、私たちのサークルが4拠点を担当しています。

定期的に活動に参加している学生は約20名で、新入生も含めると30名近くになります。
シフトを組む際は、活動に影響が出ないよう、ベテランと新規のメンバーをバランスよく配置して、現場で誰かに相談できるような環境づくりを心がけています。

当日は、子どもたちが持ってきてくれたドリルや課題の勉強を隣で見守るところから始まります。ヒントを出したり、答えを見ながら一緒に考えたり、それぞれの子どもに合わせた関わりを意識しています。
勉強を見るだけでなく、学校でのできごとやアルバイトの様子、受験や将来の話など、いろいろな話をします。自分自身の新鮮な経験も交えながら子どもたちと楽しい時間を過ごしています。

活動のなかで印象に残っていることはありますか。

「待ってました!」半年ぶりの嬉しい報告

大学の授業の関係で、毎週のように入っていた拠点のシフトに入れない時期がありました。
その拠点で毎週関わっていた小学校高学年の女の子は、とても静かで、算数が大の苦手。私が行くようになってからは、いつも算数の勉強をみていました。

半年ぶりにその拠点に行くと、ドアを開けて私の姿を見つけたその女の子が「待ってました!」と声をかけてくれました。
それだけでも嬉しかったのに「算数できるようになりました」と報告してくれたんです。

半年も期間が空いたのに覚えてくれていたこと。そして、苦手な算数ができるようになったことを報告してくれたこと。
慕ってくれる関係性が築けたことが嬉しくて、この活動に携わっていてよかったと心から思いました。

活動のなかで苦労したことはありますか。

小1から高3まで、学校を凝縮した空間

せたゼミにやってくる子どもたちは、小学1年生から高校3年生までと幅広い年齢層です。背景や個性も様々で、学校をぎゅっと凝縮させたような空間です。

受験やテストに向けて勉強に集中したい高校生もいれば、学童で宿題を終わらせて早く遊びたい小学生もいます。どちらの気持ちも尊重しながら、どうすればみんなが過ごしやすい場になるかをいつも考えています。

騒ぎたい気持ちのある子には大きな声を出さずに楽しめる遊びを提案したり、勉強と遊びの順番を工夫するなど、本人のやりたい気持ちを大切にしながらも、その時々の状況に合わせた配慮を積み重ねています。

我慢をさせてしまったことへの葛藤

ある時、新規の小学校低学年の子どもたちが多く参加するようになり、学生メンバーが対応に追われた結果、もともと来ていた小学校高学年の女の子たちと過ごす時間が急激に減ってしまいました。
女の子たちは少し寂しそうな様子で、学生たちに気を遣っているのが感じられました。
我慢をさせてしまっていることが申し訳なくて、どうすべきなのか悩みました。

そのときはすぐに運営メンバーや社協の職員さんと相談して、学生の配置を増やすことにしました。
また子どもたちの到着する時間に差があったので、密に関わる時間帯を分けたり、遊び方を工夫して、解消することができました。

我慢する時間が長くなって「もう行きたくない」と思ってしまわないように、子どもたちの変化に気づいたら早めに対応するようにしています。

サークルの代表として意識していることはありますか。

「子どもたちを第一に」

新しく加入するメンバーに伝えているのは「まずは学生生活を大事してほしい」ということです。
せたゼミの活動が負担になっていると、それが子どもたちにも伝わってしまうと思うので、無理のない範囲で活動してもらうことを大前提にしています。

そのうえで「子どもたちを第一に考えるサークルであること」も必ず伝えています。
一般的な大学のサークルは大学生のために存在していますが、私たちのサークルは子どもたちのためのサークルであり、子どもがいて初めて成り立つ活動です。
学生生活を大事にしたうえで、ある程度の責任感を持って活動してほしいと話しています。

とはいえ、大学生側も最初は不安でいっぱいです。
疑問や悩みを解消できるように、少人数で質問を受けるなど、不安をケアする機会を意識してつくっています。

大学生同士が気軽に相談しあえる環境

活動を通じて、どのような変化がありましたか。

障害者施設の実習で知った、せたゼミで培った「関わり方」

大学で学んだ対人援助のスキルを常に意識しているわけではありませんが、せたゼミの活動を続けたことで実践の機会が増え、自然と身に付いているのを感じます。

今年の春休みに、社会福祉実習で障害者施設に行ってきました。
せたゼミの子どもたちとは年齢や個性も違う方たちばかりでしたが、人と人との基本的な関わり方は共通するものがあると感じ、せたゼミで学んだことは他分野にも応用できると気づきました。

またサークルのメンバーにとっても、地域で実際に動き、誰かに必要とされ、感謝される立場になることは、自己肯定感を高める経験になっています。
大学生は将来に不安を抱えがちな時期ですが、社会へ踏み出す安心感にもつながっていると思っています。

「せたゼミ」はどんな場所だと思いますか。

「少し年上のお姉さん」だから話せる本音

「少し年上のお姉さん」という距離感は、「自分の背景までは知らなくても、なんとなく気持ちを分かってくれる存在」と感じてもらえるようで、子どもたちが他では話しにくいことを話せる場所になっていると感じています。
せたゼミの活動を通じていろいろな子どもたちと関わるなかで、年齢が近い存在がそばにいて関わり続けることの大切さ、だからこそ生まれる安心感があると実感しました。

地域の中に、近すぎず遠すぎない「ちょうどいい第三者」と関われる場があることは、世田谷のいいところだと思っています。

地域のボランティアとも連携して、安心できる場をつくる

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